昨日の公式戦は3年野球部員にとって、
中学最後の夏の大会。負けたら即引退、という言い訳なしの真剣勝負。
果たしてそれは、試合開始前から波乱含みだった。
というのも対戦相手が試合1時間前になってもやって来ない。
どういうわけか、監督が選手に「今日の試合は中止」との
連絡を、回してしまっていたらしい。
それで、開始時間が1時間以上繰り下がることに。
宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いを
思い出したが、今回ばかりは待たされた方が負けるわけにはいかない。
うちのエースくんは初回から絶好調だった。
3者三振でアウトをとっていく。
一方相手の投手もなかなかこちらに絞り球を選ばせない。
お互い得点入らないまま、回は進んだ。
ところが、また区大会での悪夢が再現されてしまったのだ。
失投を見逃さなかった、相手の3番が先制ホームラン。
体格が良く、スラッガーたる風情を漂わせてはいたが、
まさか再び、うちのエースがホームランを浴びるとは・・・
それまで元気いっぱいだった大応援団、ベンチとも
一気に顔色が変わった。
相手チームは勝利を確信したかのごとく
物凄い盛り上がりを見せ、雄たけびを上げる。
でも、まだまだ序盤だ。気持ちを切り替えて!!
母たちは必死で選手たちに声援を送っていた。
そう、まだ1点だ。
エースくんの顔色も一瞬白くなったように見えたが、
淡々と、次打者をきってとり後続を絶った。
その裏の攻撃で、取り返せばいいだけのこと。
ところが、うち打線はまだ梅雨空のように湿ったまま。
チャンスがあっても、なかなか1点を挙げられず、
我慢の野球が続いた。
そして、回が進み何となく焦りのようなものが
チームの中には漂っていた。
そんな時だ。
フォアボールでランナーを出し、ホームランを打った
打者にまた痛烈なライナーヒットを浴びてしまう。
2アウト1,3塁の場面。
次打者の、完全に打ち取った打球が、キャッチャーの前にコロコロ転がった。
それを1塁に素直に送球すれば3アウトだったはずが、
キャッチャーが、まさかの2塁への悪送球。無常にもセンター前にボールが転がり
その隙に当然3塁ランナーはホームイン。
まさかの2点ビハインドとなってしまう。
2アウト1、3塁で、まだピンチは続くことに。
自分でも信じられない痛恨のミスに
いつも一番元気にチームを引っ張ってるキャッチャーが
うつむいてしまった。涙をこらえているのがわかる。
空気が完全に凍り付いた。
相手の喜んでいる様子が絵空事のようだ。
その時、応援団席にいたキャッチャーの母が動いた。
「そんなとこで泣くんじゃない!!
しっかりなさい!ちゃんと胸張りなさいよお!!」
と、いつもの彼女から想像もできないようなゲキがとんだ。
目が覚めたように、彼もキャッチャーマスクをかぶり直した。
まさかの事態。頼りの女房役のエラー、涙、母のゲキ。
並みのピッチャーなら、動揺してもおかしくはないだろう。
だが、うちのエース君はそんじょそこらのエースじゃない。
次の5番打者を、気迫のピッチングで三振させ3アウトチェンジ。
彼は本当に凄いエースだ。感動すら覚える。
その時点で、6回表。0-2で負けている。
あとうちの攻撃は残すところ2回となった。
2回の攻撃の中で、3点以上入れないと負けが決まる。
負ければ即引退なのだ。嫌な予感を必死に振り払う。
運命の6回裏のうちの攻撃が始まった。
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